被災地から避難する場合の流れ

2011年3月27日更新



 ここでは、被災地から他所(県境をまたぐ遠方を含む)へ避難する際のおおまかな流れを説明します。各地域で取扱いが若干異なることも予想されますので、参考としてください。被災後の混乱状況で避難先を見つけて調整を進めることは簡単なことではありませんが、もし避難を決断されたならば、この資料が少しでも皆さまのお役にたつことを願っております。  なお、災害救助法で避難指示が出た場合は除きます。(自動的に避難しなければならないため)

文責:                                                                        
全日本手をつなぐ育成会機関誌「手をつなぐ」編集委員
日本発達障害福祉連盟「発達障害白書」編集委員

又村 あおい

 

※項目をクリックすると、ポイントとチェックが表示されます。

(その1)被災地が「災害救助法」の指定地域かどうかを確認

ポイント 被災地からの避難には、「災害救助法」という法律が適用されます。
この法律が適用されれば、避難先への移動や避難所の経費などが支給されますが、適用範囲は国から告示されることになっています。この確認が必要です。(災害救助法の適用範囲に入っていない場合、自主的に避難することは可能ですが、各種経費が支給されない可能性があります)
チェック ネット環境が復旧している場合は、厚生労働省のHPから確認できます。
あるいは、検索エンジンに「災害救助法 適用地域」と入力してもOKです。
ネット環境が復旧していない場合は、所管の都道府県へ確認します。

(その2)障がいのある人ご自身の意向確認

ポイント 被災地が「災害救助法」の適用地域であった場合でも、最終的に避難するか、当地に留まるかの判断は、障がいのある人自身の意向に沿うことが必要です。
チェック 現地の支援スタッフが、障がいのある人の支援特性に合わせた方法で意向確認を行います。

(その3)現地での支援体制の確認

ポイント 避難を検討する際の判断基準として、現地での支援体制が今後継続的に維持できるかどうかも重要です。
チェック 支援者自身が被災者でもありますので、支援スタッフの安否確認と、支援現場へ復帰できるかどうかの確認を行います。
なお、現地での支援を継続する際に支援スタッフが不足している場合は、所管の都道府県へ依頼すれば応援職員の派遣を受けることができます。
(ただし、調整にはある程度の時間がかかります)

(その4)避難する人の状態像に応じた避難先の検討

ポイント 障がいのある人の避難先を検討する際には、被災時点で受けていた福祉サービスの支給決定をある程度勘案する必要があります。
これには2つのねらいがあります。1つは、障害のある人の状況に応じた避難先を調整するねらいです。
たとえば施設入所している人の場合、民間のホテルやアパートなどを借り上げた避難所では支援が行き届かない可能性もありますから、基本的には避難先として入所施設を候補とする必要があります。
もう1つは、被災時点で受けている支給決定を避難先でも活用できるルールを活かすねらいです。
このルールを活用することで、避難受入れ先でも避難前と同様の福祉サービスを受けることでき、避難受入れ先の事業リスクを軽減することが可能となります。
(なお、その場合、避難受入れ先は支援員を追加せずに定員超過で受け入れても減算などはありません。また、異なる事業種別で受け入れてもOKです。(例:生活介護の支給決定を受けている人が、就労継続B型事業所を利用してもOK))
チェック 別添の「避難する人の状態像に応じた避難先の検討整理表」 を参考にしてください。
また、ある程度まとまった人数が避難する場合には、避難する人の状態像ごとにグルーピングしておいた方が良いでしょう。

(その5)避難先の確保

ポイント 避難先の確保には、「公的ルート」と「民間ルート」があります。
公的ルートで避難先を確保する場合は、所管の市町村や都道府県へ障がいのある人が避難を希望する旨を伝え、福祉施設や福祉避難所の確保を依頼します。この方法は行政を通して調整するので確実性が高く、避難先までの移動も手配してもらえるほか、依頼後は待っているだけですので手間も少ない反面、行政機関も大混乱状態になることから調整までに時間を要する面があります。
民間ルートで避難先を確保する場合は、事業所間のつながりや当事者団体のネットワーク、あるいは個人的なつながりなど、行政以外のあらゆる方法を使って自ら避難先を確保する必要があります。行政機関も混乱している状況では、役所の方から民間ルートでの避難先確保を依頼されることもあります。
チェック 以上を総合すると、民間ルートで避難先を確保する場合、最終的には公的ルートに乗せる方法が現実的です。
避難先で引き続き福祉サービスを利用するケースや、避難先を福祉避難所へ指定してもらうなどの動きは行政が承知していないとスムーズに動きませんし、現実的に避難先までの移動は大型バスなどをチャーターすることになりますから、行政のバックアップが不可欠です。
避難先を確保するまでは民間ルートで調整し、避難先が確保できた時点で所管の市町村や都道府県へ連絡を入れて、そこから先は公的ルートに乗せる方法が有効と考えられます。

(その6)避難先への移動

ポイント 避難先を確保し、行政とも連絡が取れたら、いよいよ避難先へ移動します。移動の際には、移動手段の確保と持参品の絞り込みが必要になります。
チェック 移動手段については、被災地では十分なガソリンを確保できない可能性が高く、ある程度の人数が乗れる大型バスを自前で確保することも困難なため、所管都道府県がチャーターするバスを活用する方法が最有力です。(そのためにも、どこかの時点で必ず行政には連絡を入れることが重要です)自力での移動が可能な場合には、自動車や鉄道などを使って避難先まで移動する方法もありますが、この場合も必ず所管都道府県には状況を報告するようにしましょう。所持品については、想定される避難期間や移動手段によっても絞り込み方が変わってきますが、大型バスを前提とした場合、

・ある程度の現金(できれば5万円程度)
・2〜3日分の着替え(タオルなども)
・健康保険証
・自立支援法等の受給者証
・携帯電話と充電器、腕時計(持っていれば)
・ご本人が大切にしているもの

など、必要最小限の持ち物が想定されます。その他、ある程度のグループで避難する場合には、付き添いの支援者も同行することが想定されますので、グループ全体で必要となる共用物品も持参する必要があります。なお、生活に必要な物品については、避難先で準備していただくか、到着後に購入することになります。(参考までに、福祉避難所へ指定されると、消耗品の調達費用や食事の提供費用などが支給対象となります。また、民間のホテルやアパートなどを借り上げた場合には、家賃と食費込みで、1人1日5,000円程度が支給されます)

(その7)避難先へ到着した後

ポイント 避難所へ到着した後は、障がいのある人がなるべく避難前の生活を維持できるように支援するとともに、避難先の事業所や所管市町村、都道府県との調整も重要になります。
チェック 避難先での生活が長期間にわたる場合(今回の東北関東大震災の場合は、避難所開設期間が最長で2ヶ月です)、障がいのある人の生活についても十分な配慮が必要です。ご本人との面談などを踏まえて、別添の「避難する人の状態像に応じた避難先の検討整理表」 を参考に避難先での生活支援計画を策定しましょう。なお、自立支援法の個別給付を活用する場合には、サービス利用計画作成費の支給対象となります。一方、避難先の所管市町村、都道府県との調整については、2つのねらいがあります。

1つは、避難先の事業所が避難してきた人を受け入れていることを知らせるねらいです。
特に県境をまたいだ避難先の事業所を福祉避難所として指定する場合、指定者は避難元の都道府県になりますが、当然避難先の市町村や都道府県との調整が必要になります。
その際、避難先の所管市町村、都道府県が事情を承知してないと話がスムーズに進まなくなってしまう可能性がありますので、必ず報告するようにしましょう。

もう1つは、障がいのある人の生活を維持するための福祉サービス利用をスムーズにするねらいです。
被災時点で受けている支給決定を避難先でも活用できるルールがあることは既に触れましたが、この場合は避難先の事業所が定員超過になったり、事業所種別が異なる支給決定を受けている人を受け入れたりする状況が起こります。こういった事情を避難先の所管市町村、都道府県が承知していないと、後からトラブルになる可能性があります。また、被災時点で福祉サービスの支給決定を受けていなかった人の場合、避難先の市町村と避難元の市町村が電話等で調整して新たな支給決定を行う必要があります。この業務を支援者が勝手に進めるわけにはいきませんから、必ず避難先の市町村へ状況を報告し、相談する必要があるわけです。

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【別添資料】避難する人の状態像に応じた避難先の検討表