MURMUR

 

1998.03.22 (SUN.)

 

 鍵をかけた人へ

 

その部屋に閉じこもり鍵をかけた人へ

そこはとても安全です

何故なら誰も居ないから

鍵をかけた人へ

そこは暗い夜ばかりの世界ではなく

思い描くままに空も高く青く 広いでしょう

その部屋に閉じこもり鍵をかけた人へ

ときには膝を抱いて哀愁漂うメロディを口笛で吹き

ときにはそこはかとなく悲しい気持ちで枕を濡らし

晴れた日はのびのびと草原に寝そべることを想像し

真っ暗な夜に天井を睨んで朝を待つこともあるでしょう

 

鍵をかけた人へ

けれど時には扉を開いて おどおどと見知らぬ世界を徘徊し

行き交う見知らぬ人の姿やことばに理不尽に傷ついて

そしてまたその部屋に逃げ帰り

急いで鍵をかけた後、泣き疲れて眠る方がいい

そのドアが錆び付いてしまわぬように

自分の鍵ですら開くことができなくならないように

 

鍵をかけた人へ

私はあなたに帰ってきて欲しいのです

もしも間にあうものならば