MURMUR
2010.12.08 (WED.)
工房(?)潜入ルポ
いつもの如く、誰に依頼された訳でもないけれど(^^;、工房に潜入中。あまりに仕事がないもので
バイトだ、と探して行ったところが工房。家具を作っている工場(こうば)である。
面接にはスーツを着て、こ洒落たショー・ルームでコーヒーなどをいただいた。週に4〜5日の、
時給制だという求人、ところが面接で代表が「じゃ、月給でいいじゃないか」と言った。
この世知辛い不景気な世の中で確かに非常に安い月給ではあったけど、何もしないよりマシな
バイトのつもりな私は「はあ、ではそれで。月曜日から金曜日・・・?」と尋ねれば、「土曜日だよ」と
事も無げに言い放つかの代表。戸惑いながらも、就活中のつなぎだし、長くはないはずなので
「では、それで。」・・・それが大きな誤りだったのね。。。
軽井沢にギャラリーもあるし、さぞ洒落た「工房」と思い、初日。事務所はあっちだと教わっていたので
時間に行っても誰ひとりいない。雑種のやかましい犬が二匹吠えているのみ。
ドアは開かず、そりゃー誰もいないんだから開かないんだよね、と思いぽつんと座りこんでいたら、
やっと所定の時間から10分ほど経過したところにバイトの経理のおにーさんがやってきた。
ちなみに私は経理で採用されました。ここ大事。おにーさんが開けたなら、あら不思議。その閉ざされた
ドアはあっさりと開いた。なんと、ドアノブは下げるのではなく、上げるのであった。おそるべし、工房。
そして開かれた工場(こうば!)は、小さい頃に見たママの実家の木工所のそれだ。つまり「こうば」だ。
そのおが屑やら木の粉まみれの二階が事務所だったんだね〜Σ( ̄ロ ̄lll。
半日今までどんなことしてたか説明してもらった。請求書が来た日付で仕訳を起こす。その日に払ったような
仕訳を起こす・・・!!? 今まで苦労して、私に教える諸先輩も苦労して、私が学んだ常識を覆すその
経理・・・Σ( ̄ロ ̄lll×2!!
だからつまり本当だったら
取引のあった月
仕入高/買掛金
支払した日
買掛金/普通預金
だからつまりツジツマが合うじゃん。仕入れた月も合ってるし、預金が動いた日も合うよね。
ところが実際今までは
請求書が発行された日付
仕入高/普通預金
ウソだ〜〜〜!!! 8月に仕入れた材料代をしかも翌々月の支払だからホントは10月に払っているのに、
預金が8月に動いたことになってるのよ!!??? ・・・でも、おにーさんは何も悪くない。
おにーさんは本当は木工職人さんなのに、経理のこと知ってるからって月に2回ほど来させられていた
バイトの人だったのだもの。
まー、だけどそんなことは、7月決算(それも半端だけど)だから、そう多くはない取引、 8月からの分をちょちょいのちょいと直してしまえば、今期はちょっと普通になるだろう、と考えた。 そうしたらせいぜい2〜3ヶ月のバイトとしては、ほかのことも考えたって仕事の量的には 足りないわよね、と。
ところが・・・次の日あたり、代表=親方が、とある原稿を見せてきた。「これどう思う」と。
文章に目を通す。何を言っているのかちんぷんかんぷん。一瞬無職生活でとてつもなく脳退化したんじゃ
ないかと哀しくなるほどに。そして、いやいや私が木工の世界を知らないことが原因なんだろうよ、と次の
錯覚を。親方曰く「これを読みやすい文章にしてみて」。文章を読むのも書くのも嫌いじゃない。
これはほどほどに楽しいかもね、なんて考えたのが今ではウソのようですよ、ホント。
ただ、文章を読みやすくするのだろうとコトバどおりに思っていたが、打ち直しながら読み込んでみれば、
こんなに散漫でちんぷんかんぷんな文章は未だかつて見たことがない!それでもなんとか原稿に忠実に、
ワープロ屋的な仕事をした。「はい、どーぞ」と渡してみれば、「全然直ってないじゃないか」って。
ホワッツ!? やりとりを繰り返す内に、なんとなくわかった。何が言いたくて、何に使うのかは
問い詰めてもなかなかわからないものの、その状況がなんとなくわかった。親方は思いつくことを、湧き出て
くることをなんだか書いてみているんだけど、自分でもその箇条書きがとてつもなく散漫なことはわかってる
訳だ。でも思いつくいろんなこと、誰かにどんどん知って欲しくてたまらない。だから、なんに使うかは
よくわからないけど書いてみては、文章になって欲しいんだね。それはわかったんだけど、とにかくその
作業は楽しいどころじゃなく辛いとしか言いようのない酷い仕事だった・・・。初めの原稿は誰かが一度
チャレンジした「文章」だったけど、次にきた原稿は全くのメモ。読める文章にするためにそのメモの中から
何が言いたいのかを右や左や表や裏から見つくして絞り出す。絞り出したら出だしの文章やらつなぎの
文章やらを書く。モノ書きな気分。しかも自分の考えとは一切関係のないモノを書く。。。もちろん今まで
見たことも聞いたこともない木工の、本当にわからないことも調べまくる。できてみて、よっしゃ私って天才?
とか若干いい気になって親方に渡す。すると「俺はそんなこと言ってない」とくる。メモに書いて
あっただろ〜!!!?
何度も何度もガマンにガマンを重ね、それなりに親方の勝手な言い分も通ったものに出来上がってほっと
ひと息つこうかというときにまた何か思いついてしまって、「これもどこかに入れろ」と新たな
メモが・・・(O.O;) もうやめて〜〜〜( iдi )
それ以来、親方が鉛筆を持っている姿を見ると、下腹が痛くて・・・。
「それが仕事だろ」と親方が言うもんだから、心の中では「いや、私経理だし」と思ってしまい、
「そうでしょうか」くらいには口に出してしまう。そうかと思うと夕方そんなメモを持ってきて
「明日使う」とか言うから、残業代ももちろん付かない工房なんだけど、しょーがねーなと、更なる
ガマンで速攻打ちまくる。「私は仕事は家に持ち帰らないタチですから、あとの仕上げは明日の午前中」とか
言い放ち帰ろうとすると、今度は「これは仕事じゃない。楽しいだろ?」とか言うんだよ(T∇T)
ちなみに今までいた事務職の人たちもこれには散々苦労していたそうです。そりゃそーだ。
そんな日々の中で、まー、でも私は経理なんだよ、今は親方のメモもないよ、というときは、若い職人さん たちが「今日出荷のペンキ塗ってください」とか「この木片にサンダー(やすり)を」とか容赦なく 言ってくる。だいたい今日出荷するもんに今ペンキ塗ってていいのかよ!?? と、びっくりとクエッション の連続・・・。
パートのねーちゃんはどうでもいいようなことを朝とか夜とか昼間とか、私の携帯に電話してきて、
今じゃなくてもいいだろ、という話をしまくり、常にわざとらしい程の忙し気な動き方をする。
入社(今でも社員なのかバイトなのかは不明だけど)間もない頃、奥さんが「ここに入ると男も女もみんな
きれいになる」と言った。確かにきれいな顔立ちの職人さんたちだ。でも、前にしばらく働いてて、今でも
ときどき遊びにくる女の子が同じように「きれいになるんですよ」といったときは「え、ウソ。」と
苦笑してしまいました。。。今どき珍しくあまりきれいではないこの冬場に妙に汗かきな
若い子で・・・(^^;;;
逆に私はここで働いていて、非常に老けこんだ気がして不安なの。親方は「おい、おばさん」とか
言いやがるし、パートのねーちゃんは「おかあさん」とか呼びやがる。私に子供はいないし、あなたが
私の子供なら私は10歳足らずで出産したことになんだよ凸(-_-#)
そして一日中かがみこんで木片にボンドでマグネットを貼りつけたりしていたら・・・。
また初めの頃、「まだ(犬の)散歩行ってないんじゃないのか!」と突然親方に怒鳴られる。
ホワッツ!?再び。どれどれ、と二匹の犬を連れて散歩に行ってみれば、親方そっくりの全く聞かない犬
じゃねーか!!!
柴犬よりちょっと大きいくらいの雑種なんだけど、引っ張りまくってとても私の軟な力では制御不可能・・・。
うっかり走られた途端に野原に前のめりにコケた。近所の散歩している人に「すいませーん!この犬連れて
すれ違えませーん!!」と叫んだら、「あー、放し飼いにしてたから注意したあの犬か」
と・・・(;´∀`)
ペンキ塗りの話には呑気に「楽しそ〜」などと言ったトモダチも、「二度とそんな犬、散歩行っちゃ駄目だよ」
と理解を示してくれました・・・。
一応、散歩については「私にはムリ」とアピールしまくって、若い職人さんにまかせることができたけど。
まー、とにかく職人さんの世界なんだよね。親方が偉い。見習い工の方は勉強がてらきてるから
親方はとにかく偉い。でも私は見習い工じゃないので、自分の犬の散歩は自分でしようぜ、と
思うだけだよ。自分で釣ってきた魚は自分でさばこうよ、と。・・・親方は釣りが大好きなのだけど釣ってきた
魚は弟子職人さんたちが片付けるからさ〜(^Д^〜)
もうひとつ、とんでもない、信じがたいことがあった。
奥さんという人はまあどちらかと言えば都会的な顔立ちだと言えなくもないしっかり者だ。毎日彼女は
ギャラリーに詰めているので、職人さんの思いはせずに過ごしている。私もギャラリーの留守番をすることが
あるだろうと言うので、業務の説明をききに行ったときのこと。
おしゃべり好きな奥さんに乗せられて、彼氏いないの、なんでいないの、好きな人いたでしょー、的な会話で
数時間。実際私は仕事とプライベートがほとんど別物だし、誰とでも延々としゃべれるタイプじゃないし、
親しい人だと思うのには随分な手間がかかるヒトなので、初めはそれでも馴染んだ方がよかろうと思って
がんばっていたんだけど、さすがにうんざりしてきた夜も更けた頃・・・。
実は奥さんの知り合いが、私のことを知っているという。そしてその知り合いは「ジンさんの彼女ヅラした
イヤなオンナ」と私のことを忠言したという。。。
疲れてるわ、悔しいやら哀しいやら、やっぱり残業代もつかないのに結構遅くまで話し続けさせられた挙句に
その結末。帰ってからいたたまれず、そんなことかあったよとトモダチに電話した。ずっと長いこと、
それは長いこと、ジンさんのことや私のことを見ていたトモダチならば、誰が悪者かわかってくれる。
そんな風に聞き出して、言い出す奥さんて人もひどくない?と言っていた。疲れたよ・・・。
ジンさんのこと、「後悔するんだろーな」と思ったことは何度もあるけれど、本当に後悔しています。
今では他の要因も重なって、本当に本当に心底、ジンさんに長い年月を費やしたことを、心底後悔しているし
恥じてもいます。。。でもやり直せる7年間ではないから、忘れる。
せめて、その後の私に向かっておばさんとか、おかあさんとか言いやがらないで
欲しいよなぁ・・・(*ノ-;*)
全然話違うけど、テニスでお世話になってるおじさまが「いい人がいる」っつって紹介してくれた人が
いるんだよ。誰か本当に紹介してくれたりするのって久しぶりだったけど、いい人かもしれないんだけど、
だからどうしたらいいのやら、親方のメモなみに自分がちんぷんかんぷんだなあ。
呑んでしゃべってても別に親しい人じゃないし、正直言って仕事してるみたいな気分。老けこみがちな
今だから、そんな人とか会う刺激ってすばらしく感謝です。しかし・・・・・・。
そういえば、今日ってジョン・レノンの命日だね。