MURMUR

 

2000.10.08 (SUN.)

 

海月

 

少しずつ外へ出て、何も感じない毎日が過ぎていく

何も感じないようでいて、些細なことにめまぐるしく変化する

泣き続ける訳でもないのに、夜毎 胸がやけるように吐き気がする

何度も人とすれ違うので このまま同じように毎日がすぎるかと錯覚したが

それなのに、人混みに出ると全身が泡のように麻痺して

歩調は異様に遅くなり、今にも吐きそうな居心地の悪さでまた眩暈がする

人の声を

聞こうと、ふと思いついても いざとなれば全て億劫で

このまま私は腐敗して、風化して、塵になり

消えてしまえという幻覚が、いつ現に変わるのかをじっと待つ

 

冷たくて、硬くなった海月の死骸

早々に花で飾って、早々に灰にした

真っ黒な、なんの光のひとつもない

海月の死

 

  一方魂は、逆に闇の一切ない光で溶けて

  その魂は、全く別の空間へ開放された

  夢にも思われぬ健康なからだ

  夢にも思われぬ開放された魂

  夢にも思われぬ 安らかな心地、安らかな開放

 

けれど、私は胸を爛れさせ

異臭のする肉体とただ漠然と膝を抱えて横たわる

真っ黒な、なんの光のひとつもない

海月の死